山間集落に光ファイバー2億8680万円
■増穂町長「こんなバラマキいいのかな」 9割以上国負担 国側が強く勧誘
麻生政権が5月に組んだ15兆円規模の今年度補正予算のうち、民主党が回収を急ぐとしている約8兆円の「未執行分」。経済危機対策と銘打 ちながら「不要不急の事業も含まれている」というのが同党の主張だ。実際はどうなのか。現場を歩くと、地元首長自ら「こんなバラマキでいいのか」と漏らす 事業が、まさに動き出そうとしている場面に出くわした。(吉田晋)
■町議会は16日採決「不急の事業」に相当?
増穂町で4日開会した9月定例議会に、約5億8千万円の補正予算案が提出された。例年の決算が50億円規模の町にとっては、異例の巨額補正。このうち、ほぼ半分の2億8680万円は、「地域情報基盤整備事業」に充てられる。
町の中心部から西側に見上げる山に分け入り、やがて見えてくる山間の集落に、光ファイバーケーブルを敷設する事業。概算で延長30キロ メートルのケーブルを、電柱に架線する。2億7千万円弱が国の補正予算からの支出で、町の持ち出しは、1900万円の地方債と、2万円の自主財源だけだ。
国の予算は、「地域情報通信基盤整備推進交付金」(総額766億円)と、「地域活性化・公共投資臨時交付金」(同1兆3790億円)が充 てられる。インターネットなどに使う高速大容量通信(ブロードバンド)空白地域の解消を名目とした前者と、公共事業の追加に伴う地方の負担軽減を目的とし た後者を組み合わせて、予算の9割以上が国庫負担という破格の事業が形になった。
町は、年度内に着工し、敷設が終われば地元ケーブルテレビ会社に設備を貸与して、インターネットやケーブルテレビのサービス提供に使ってもらおうと、構想を描く。
ただ、対象となる平林、穂積両地域は合わせても381世帯、815人。65歳以上の人口は優に40%を超える。町が5月末に行った住民ア ンケートでは、回答があった204世帯のうち、ブロードバンドサービスへの加入に前向きなのは112世帯にとどまった。ケーブルテレビも、加入に前向きな のは154世帯。実際にどの程度活用されるのか、未知数だ。
「交付金がなければ、考えもしなかった事業だ」。志村学町長は、はっきりと言う。
5月中旬、総務省関東総合通信局の部長が、町長への面会を求めてきた。「是非この際、前向きに検討してください」「来年以降、このような事業は約束できませんよ」
積極的に勧められ、国への事業要望を上げた志村町長。「もらえるものはこの際ありがたいが、こんなバラマキをしていいのかな、とは思う」と国の財政を気遣う。
同じ事業は、県内でほかに2町村が準備中だ。富士河口湖町は、すでに6月議会などで2億7200万円の補正予算を組んだ。担当課は「何年も前から構想はあったが、庁内の財政担当から切られ続けてきた事業。今回は『交付金が確保してある』というので動いた」と明かす。
とはいえ、いずれの町村も国の交付金を受け取ったわけではない。まだ内示、いわば口約束の段階だ。15日までに、国への交付申請を上げるよう求められていて、国が交付額を確定する「交付決定」はその後になる。
民主党は、交付決定前の「未執行分」の補正予算は、可能なものを中止して、新政権の目玉政策の財源に回す考えを示している。
増穂町の担当は「8月末に内示の連絡があってから、何も聞いていない」と話す。16日の町議会最終日で予算案が通り次第、準備を進めていく、としている。